ドラムが3人となった7人編成のキング・クリムゾンの日本公演、最終日でクリムゾンにとっても年内最後のライブである12月21日の名古屋公演に行ってきました。
クリムゾン・プロジェクトで、エイドリアンブリューは「キングのいないクリムゾン」と言っていましたけれど、キングも健在であることを示したライブでした。
観客は2000人くらいだったでしょうか、席はかなり埋まっていた感じです。
会場に入ってみるとサウンドスケープが流れており、ドラムがステージ上に3セット並べられているのを見て期待が高まります。
例によって「録音するな、写真を撮るな」のアナウンスがありますが、「トニーがカメラを構えている間だけは写真を撮ってもいい」というアナウンスが日本語で流れます。そのあと、ロバート・フリップと思しき声で同じ趣旨の英語のアナウンスが流れてビックリ。「クリムゾンのパーティを楽しもう」的なことを最後に言っていて、他のメンバーの「やー」という声も聞こえてきました。これだけでも、今までのクリムゾンとはかなり雰囲気が異なる気がしました。
メンバーが登場して「Islands」の最後の1分くらいに収録されている「Walk On: Monk Morph Chamber Music」が流れますが、単にSEのテープ音だけでなく、バンドのメンバーも楽器を使ってオーケストラのチューニング風の音を出し、またロバート・フリップが(多分)肉声で「123223」とカウントしたのでまたびっくり。
これに続いて、ビル・リーフリンが特徴的な金属音を奏で始めたので、最初の曲は「太陽と戦慄パート1」だとわかりました。バイオリンのフレーズは抜きで、ロバート・フリップのギターがイントロを奏でます。主旋律が出てくるパートになるとドラムの咆哮にまた驚き。原曲のスタジオ録音もドラムとパーカッションでけたたましく演奏されていますが、ドラムキット3台で演奏する今のクリムゾンの迫力は別格です。ライブ盤の「Live At The Orpheum」ではこの迫力は収録していなかったですね。これは本当にすごい。
中間部のバイオリンパートはメル・コリンズがサックスのパートとなっていました。コーダ部分が終わって最後の金属的なパーカッションはビル・リーフリンが演奏しますが、その余韻が消える前に拍手する間も与えず次の「Pictures of a City」の演奏が始まります。
下記のセットリストの空行が入れてあるところは拍手があったのですが、それ以外の部分は拍手もなく曲が続けて演奏されていました。MCも全くなく、とにかくどんどん曲を演奏するという雰囲気が強かった気がします。
「Pictures of a City」はメル・コリンズのサックスが目立つ曲ですが、ここでもドラムの迫力がすごいです。後ろの高い段で演奏する4人を圧倒するかのようでした。
次は、ジャッコがギターを弾きながら「Peace – An End」(最初の部分だけ)。まず日本語で歌って、それから英語で歌いました。有志連合が勝手に他国を爆撃するロクデモない世界ですが、平和は大切です。
これに続いてまた切れ目なく新曲の「Radical Action」と「メルトダウン」。このメドレーは、ドラム3台をフルに生かした曲です。3台のドラムが叩き出すビートに荒々しいギターのフレーズが切り込む、典型的なクリムゾンサウンドです。素晴らしい。ライブだけで終わらせず、スタジオ録音したバージョンも聴きたいですね。新作スタジオアルバムを期待したくなります。
そして、これに続いて切れ目なく「レベル5」。あのアルバムのジャケットは防塵マスクでしたし、ついつい原発の爆発事故を連想してしまいます。
「Level Five」の中にはギターの掛け合いのパートがありますが、ここがドラムの掛け合いに置き換えられていてびっくり。今回はドラムが主役なのかも。
ヘビーな曲が続いて拍手のあとは、ビル・リーフリンがメロトロンのパートを弾き始めて「Epitaph」。この曲はどの公園でも演奏しているので聴けると思ってはいましたが、やはりこの曲のライブは感激です。
この後の曲順はひょっとすると思い違いかもしれません。「Easy Money」では、中間部のギターソロでロバートフリップが緩やかなフレーズでロングトーンのサウンドを奏で、「Evening Star」のギターサウンドを思わせました。この音が聴けたことにも感激しました。
「Easy Money」のあとは、ひょっとしたら「トーキング・ドラム 〜 パート2」かと期待したのですが、やっぱり違いました。
「A Scarcity of Miracles」は、ドラムがギャビン・ハリスンひとりとなったこのメンバーの演奏ですし、最も自然に演奏できていた気がします。「The Letters」とセットで「Sailor’s Tale」が聴けたのも良かった。他の日には演奏しないことも多かったようですね。
「Red」もトリプルドラムの迫力がすごい。なんだか、別の曲に感じられるくらいでした。ライブ盤をリリースするときには、ドラムの迫力が生きるような録音にしてほしいですね。そして、ラストの「Starless」、サックスが入ったバージョンをライブ演奏するのはこのメンバーが初だと思いますけれど、オリジナルのスタジオ盤を超える素晴らしい演奏です。
アンコールは予想どおり「宮殿」と「スキゾイドマン」。最後までパワフルな演奏でしたが、スキゾイドマンの途中でギャビン・ハリスンのドラムソロがあってまたびっくり。3人のドラマーの中で最もパワフルな音を出していて、重い音だと思っていたパット・マステロットを超えるパワフルさでした。ポーキュパイン・ツリーの時にはそれほどパワフルなドラミングには思えなかったのですが、クリムゾンで開花したのでしょうか。ポーキュパイン・ツリーをライブで見逃したのが残念に思えました。
ビル・リーフリンもライブで観たのは初めてでしたが、繊細でシャープな音ですね。シンバルの音の鋭さが印象に残りました。
3人ドラムの迫力と集中力の高い演奏も素晴らしかったですし、最近のクリムゾンサウンドのヌーヴォ・メタルも好きですが、やはり「Easy Money」や「Sailor’s Tale」のあのロバート・フリップのギタートーンをライブで聴けたのが素晴らしかったです。
そうそう、「パート2」をライブで聴けなかったのはちょっと残念。
今のメンバーの演奏で「パート2」を聴くためにも、あの演奏の迫力を収録したサウンドで日本公演全日程のボックスセットをリリースしてほしいですね。実現しないかな。
King Crimson
December 21, 2015
Century Hall, Nagoya, Japan
(1) Walk On: Monk Morph Chamber Music
(2) Larks' Tongues in Aspic, Part One
(3) Pictures of a City
(4) Peace - An End
(5) Radical Action (To Unseat the Hold of Monkey Mind) I
(6) Meltdown
(7) Radical Action (To Unseat the Hold of Monkey Mind) II
(8) Level Five
(9) Epitaph
(10) Hell Hounds of Krim
(11) The ConstruKction of Light
(12) Easy Money
(13) A Scarcity of Miracles
(14) The Letters
(15) Sailor's Tale
(16) Banshee Legs Bell Hassle
(17) Red
(18) Starless
Encore:
(19) The Court of the Crimson King
(20) 21st Century Schizoid Man