オーディオはアンプとスピーカー、それからネットワークオーディオになってからは DAC やストリーマーなどの機器がありますが、機器単体で100万円を超えるような高価な製品も多いです。
オーディオ機器にそんなにお金をかけるつもりもないのですが、ハイレゾ音源を聴いていて CD よりも音は良いものの、いまひとつすっきりしないごちゃっとした音だとずっと思っていました。今年はそれをある程度解消できたのが大きかったです。
理系の学部を出た人は大学で伝送系や測定系の畳み込み (Convolution) を学んだと思いますが、オーディオも同じく畳み込みとなっています。例えると、透明なフィルムを何枚か重ねてその向こうの景色を見ている感じでしょうか。それぞれのフィルムの透明度が重なって全体の透明度を決定します。
ここで透明度を上げてクリアに景色を見るには各フィルムの透明度を上げれば良いのですが、この時に最も透明度の低い黒っぽいフィルムを改善するのが最も効果が高いことになります。黒っぽいフィルムをそのままにして、透明度の高めなフィルムの透明度をさらに上げても、全体としては透明度があまり改善されません。
フィルムならば一枚づつ取り出して個別に透明度をチェックできますが、オーディオシステムの場合には一つだけ取り出してチェックというのはできないので、どれが音質を下げている要素なのかを推測しながらシステムに手を加えることになります。まあ、ここが楽しいところとも言えます。
私のシステムの場合、ネットワークオーディオでこの黒っぽいフィルムに相当するのは、音楽データーの伝送部分だったようです。これまで DLNA (UPnP)プロトコルを使った伝送だったところを、roon を入れて RAAT (Roon Adovanced Audio Transport) プロトコルに変えて大きな変化がありました。それまでは USB-DAC 経由もストリーマー経由も音質は大してかわらなかったのですが、roon を入れてからははっきりストリーマー経由の方が音質が良くなりました。
Roon サーバーも最初は Mac を使っていたのですが、これを NUC 11 i7 の ROCK (Roon Optimized Core Kit) に変更したのも音質向上に大きな効果がありました。これに 2TB のSSD を追加して、それまで Soundgenic に入れていた音楽データを移してからはアクセス速度が上がって(特に、クリックしてから音が出るまでの時間が短くなった)快適に使えるようになりました。Soundgenic を単なる smb: サーバーとして使っていたこともあり、音楽データの置き場所の変更は音質には影響を与えなかったように思います。
ここまでの入れ替えで不満だった音のごちゃっとした感じが抜けて、透明感が上がりクリアに聴こえるようになってきました。そこでネットワークハブをオーディオ用の製品に取り替え、ついでにLANケーブルもオーディオ用に交換しました。またLANのノイズフィルターも必須と思うようになりました。しかし、これらの変化は roon を入れた時に比べると小さめの音質向上だったように思います。roon を入れずに先にこちらを試してもあまり効果がないと感じたかもしれません。
ウーファーとツイーターの配線を分けるバイワイヤリングも試して音質向上を感じましたが、これも効果としては小さめだったように思います。
とはいえ、ここまで手を加えてシステム全体の音質としてはだいぶ向上しました。DENON PMA-1700NE と B&W 705S2 の組み合わせは押し出しが強くてエッジのくっきりした、ロックやジャズ向けの音が出ると思うのですけれど、だいぶ満足できるサウンドになった気がしています。
ここで残念なのが、ハイレゾストリーミングサービス(日本ではストリーミングをサブスクと呼んでいます。サブスク subscription は定期購読の意味ですよね)の Qobuz の日本参入が阻まれたことです。Apple Music や Amazon Music は roon に対応していないので候補から外れます。今でもこれらのサービスを USB-DAC 経由で使ってはいるのですが、音質としては roon よりもだいぶ落ちるようになってしまいました。
そこで Tidal の海外アカウントを契約することとにしました。Tidal も国際化は済ませているようで、VPN 経由で海外サイトからアクセスしても、契約画面や課金画面は全て日本語でした。Tidalのインターフェースも主要部分は日本語でも表示可能です。Tidal も日本参入の準備は終えている状態と見受けられますが、誰かが日本参入を阻んでいるものと推測しています。
ちなみに、Qobuz では VPN 経由の海外アカウントの契約は拒まれました。
契約さえすれば、Tidal は普通に VPN なしで roon から使えます。スマホの Tidal アプリは配信されていないので使えませんが、Mac 用の Tidal アプリは動作し、Tidal Connect 経由でもストリーマーから音が出ました。Tidal Connect を使うだけであれば roon は必要なさそうです。
Tidal を使うと、音質もローカルにおいている音源ファイルに近い高音質で聴けます。これで roon やネットワーク・オーディオのシステムも本領を発揮できる感じです。
また、日本のストリーミングサービスでは提供されていないスティーブ・ハケットやエンジェル、ルネッサンスなどの多くの楽曲もちゃんと配信されていて、使っていても気持ちがいいです。Tidal や Qobuz が日本参入することがあっても、未だにCDビジネスにしがみついている日本のどこかの会社に邪魔されて曲が配信されないのでは、使う気にならないかもしれないと思ってしまいます。(日本の会社のこの姿勢を感じるので、日本盤のCDを買うのは避けています)
来年こそ、Tidal や Qobuz が日本に参入して、ちゃんと曲データも提供されて楽しめるようになることを願っています。
今年もブログ記事を読んでもらってありがとうございました。来年もネットワークオーディオでプログレやジャズを楽しんで記事を書いていこうと思います。