イヤホン・ヘッドホンのシングルエンド接続とバランス接続

イヤホンやヘッドホンには 3.5mm あるいは 6.35mm ジャックのシングルエンド(アンバランス、非平衡)接続と、4.4mm ジャック、それから最近は見かけることの減った 2.5mm ジャックのバランス(平衡)接続があります。

バランス接続の利点を説明するときに、シングルエンド接続は左右でグランド(またはアース)を共通とする3本の線ですが、バランスは左右別の4本の線で接続していることが大きな利点であるとしばしば説明されています。

配線が3本と4本で共通している線の有無の違いもあると思いますけれど、バランス接続にはもっと大きな要因があるように思います。

信号伝送では、バランス接続は送信側の機器と受信側の機器のグランドの電位の差や揺れ(ノイズ)に影響されずに信号を伝えるために使われます。身近なところでは、USB-C の信号線は D+ と D- のバランス接続ですよね。グランドの電位差やノイズの影響を避けるためにこうなっているのだと思います。

このような信号伝送で使われるバランス接続は、イヤホンやヘッドホンで言われるバランス接続とはだいぶ意味あいが違うように思われます。

イヤホンのシングルエンド接続のアンプ構成を模式的に図にすると以下のようになります。

Single-ended signaling

シングルエンド接続

この図では1チャンネル分しか書いてありませんが、ステレオではアンプは左右の二組、イヤホンも左右の2個になります。イヤホンの片側はグランドになっていますが、シングルエンドの配線ではジャックから分岐部まではグランドを共通にしていることが多いと思います。

一方、バランス接続ではアンプを2個使いますので、模式図は以下のようになります。

balanced line signaling

バランス接続

入力はそれぞれアンプの+端子とー端子に接続するので、出力の位相も逆になり+Vと-Vとなります。ここにイヤホンを接続するので、必然的に左と右の回路は別となり、線を左右で共有することはできません。しかし、ここでむしろ大きな要素なのは、シングルエンドでは出力は V であるのに対し、バランスでは +Vと-Vを接続しているので 2V、即ち2倍の出力になるところではないかと思います。

DACアンプのスペックを見ても、バランス出力はシングルエンド出力の倍の電圧やパワーになっていますよね。こんな回路構成になっているからだと思います。

イヤホンやヘッドホンでは、アンプが2個になって出力が倍になる効果が大きいのではないでしょうか。特に、ポータブルアンプ機器は電源をUSBや内蔵電池から取っていて個々のアンプのパワーが限られているので、2個にした効果が大きく出る気がします。

逆に、AC電源を使っている据え置き型のヘッドホンアンプでは、電源に余裕があって出力が大きくとれる強力なアンプを使えるので、アンプを2個使うバランス接続の利点が弱めになっている気もします。

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